
-25mほどの砂地にサビウツボと仲良さげに佇んでいたモヨウフグ。僕が近寄っても両者共にまったく逃げようとしない。浅場ではせわしく逃げ回る生きものが多く感じられるが、深くなるにつれて海の生きものたちはまったりしてくるのか、警戒心がなくなるのか、はたまた人に興味をもつのか・・・なぜか動きがゆるやかで優雅に映る。
そんなエレガントなモヨウフグだが、サンゴにウニに貝に甲殻類と頑丈な鎧をもった生きものたちを強靭な歯で噛み砕いては食べている(雑食性で海綿や海藻も食べる)。そして、内臓からはもちろん皮膚からも毒を分泌させるほどの危険な魚で、日本では食用として流通することを禁止しているほど。こんなかわいい表情からは想像もできない野生の一面をもって生きている。
この可愛さに潜む野生のたくましさを表現してみたい・・・そんな写真がもし撮れれば今夜は最高の酒が飲めるぞ!
動かずまったりしていることをいいことに、さまざまな角度からパシパシと撮らせてもらった。しかし、あまりにも可愛すぎてなかなか野生の一面が浮き出てはこない・・・これは長期戦になりそうだ・・・いや、ダメだ。今日は横チンさんとイタルと船を出して潜っているから残された時間は少ししかないんだ。
「おまえみたいにこっちはタラタラとしていられねーんだよ!」
心の中で上から目線でそうつぶやきながら、シャッターをきるのはやめ、モヨウフグの見せる一瞬の野生のたくましさを探し出そうとファインダー越しに彼を凝視していた。
しばしの静寂が流れる・・・
5分ぐらいはたっただろうか。ついに沈黙はやぶられた!動きの全くなかった彼の口元がかすかに動き始めた!
来た来たー!これは何かやるぞ!すかさずカメラを包んでいるハウジングのシャッターレバーに右手の人差し指をかけた。
こいこい~準備はばっちりだぜ~
カモ~~ン!!!

「ふあ~~~ぁ ねむっ。海はやっぱハッピーで眠くなるねえ。あんたもそうリキまんと気楽に行こうや~。あんたもいっしょに寝てくか~。」
・・・・・・。
絶句の後には、緊迫感をぶち破ったこの微笑ましい光景に思わずにんまり。
「そうきますかあモヨウフグさん」
そして、その後には後悔の念が・・・
こうなってくれ!
何かやってくれ!
あ~すっかり海の世界にお邪魔している気持ちを忘れて、自分の欲望だけに支配されてしまっていた。僕がモヨウフグだったら、見せもんじゃねえ!写真撮るんじゃねえ!なんてきっと言ってしまいそうだけど、モヨウフグはユーモアにあくびをして教えてくれた。
何も期待せずあるがままの海をもっと謙虚な気持ちで楽しんでいこう。
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